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東京高等裁判所 昭和55年(ラ)1370号 決定

昭和五五年(ラ)第一三七〇号事件

抗告人

株式会社産友

右代表者代表取締役

木藤早人

昭和五五年(ラ)第一三七一号事件

抗告人

伊藤春正

昭和五六年(ラ)第一八号

抗告人

横浜車輛株式会社

右代表者代表取締役

畑山保男

昭和五六年(ラ)第一八号事件

抗告人

三井観光株式会社

右代表者代表取締役

藤根一男

主文

抗告人株式会社産友、同伊藤春正の本件抗告をいずれも棄却する。

抗告人横浜車輛株式会社、同三井観光株式会社の本件抗告をいずれも却下する。

理由

一  抗告人株式会社産友、同伊藤春正の各本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消し、更に相当の裁判を求める。」というのであり、不服の理由については、抗告人株式会社産友の抗告状、抗告人伊藤春正の即時抗告申立書に、いずれも「追つて提出致します。」旨の記載があるまま、いまにいたるもこれが提出はないので、その理由いかんを知る由にないが、記録を精査するも、原決定取消の事由とするに足りる違法の点を発見することができないから、右抗告人らの本件抗告をいずれも理由なしとして、これを棄却すべきである。

二  抗告人横浜車輛株式会社の本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消し、更に相当の裁判を求める。」というのであり、その理由は、別紙即時抗告申立書記載の抗告の理由のとおりである。

しかし、職権をもつて調査するに、本件競落許可決定に対し抗告することができる者は、民事執行法附則二条の規定による廃止前の競売法三二条二項により準用される民事訴訟法六八〇条一・二項、前記の競売法二七条四項に定める利害関係人、競落人又は競買人に限られるが、記録によれば、右抗告人は右のいずれにも該当しないことが明らかである。もつとも、記録中、原決定別紙物件目録(一)記載の土地の登記簿謄本によると、同土地につき、右抗告人を権利者として、所有権移転請求権仮登記(甲区三番)及び抵当権設定仮登記(乙区一一番)がされていたが、その後、前者については放棄を原因として(甲区四番)、後者については不存在を原因として(乙区一五番)、それぞれ抹消登記がなされたことが認められ、右抹消登記が同抗告人の知らない間にされた無効なものであると認めるに足りる資料は存在しない。

そうすると、右抗告人の本件抗告は、抗告権を有しない者が提起した不適法なものであるから、抗告理由について判断を進めるまでもなく、却下さるべきものである。

三  抗告人三井観光株式会社の本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消し、更に相当の裁判を求める。」というのであり、不服の理由は、「同抗告人は、本件競売事件における最高価競買人である株式会社産友から、最高価競買人の地位を昭和五五年一一月二六日譲受け、確定日附のある譲渡契約書を翌二七日原裁判所に提出して、同抗告人を競買人とする競落許可決定をするよう求めたところ、原裁判所は株式会社産友を競落人とする本件競落許可決定をしたから、該決定には不服である。」というのである。

しかしながら、競売手続における最高価競買人たる地位を、競落期日前に第三者に譲渡することは、その旨の明文の規定を欠くわが法の解釈としては、許されないものと解するのが相当であるから、同抗告人が主張するように、本件において最高価競買人たる株式会社産友がその地位を競落期日前に同抗告人に譲渡したとしても、―それが競売手続外における実体法上の効果を有するか否かの点はしばらく措き―競売手続上は効力がなく、これを無視すべきである。

のみならず、同抗告人の主張によるも同抗告人は、株式会社産友から最高価競買人の地位の譲渡を受けた者にすぎず、その他に前記民事訟訴法六八〇条一・二項及び前記競売法二七条四項所定の抗告権を有する者に当たると認めるに足りる資料は存在しないから、同抗告人の本件抗告は、不適法として却下さるべきものである。

(裁判長裁判官 倉田卓次 裁判官 井田友吉 高山晨)

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